研究概要 |
夜勤交代勤務者では、睡眠障害、消化器系疾患、循環器系疾患などのリスクが高まることが報告されている。そのメカニズムの一つとして生体リズムと睡眠・覚醒リズムおよび活動・安静リズムとの不調和があげられている。本研究では生体リズムの中でも免疫機能と交代勤務の関連を検討した。 事前にインフォームドコンセントをとり同意を得た、3交代勤務者87名と常日勤者18名、併せて105名から協力を得た。3交代勤務者は日勤日の朝と夜勤明けの朝の2回、常日勤者は2日間の日勤日の朝に採血し、NK細胞活性と、リンパ球表面抗原(CD3,CD4,CD8,CD16+56+)を測定した。また、産業衛生学会疲労研究会の自覚症しらべを用いて勤務の前後、各自4回疲労度と、採血前12時間の睡眠取得状況についても睡眠日誌を用いて調査した。その結果、以下のような結果を得た。 (1)日勤日の朝の免疫能は常日勤者と3交代勤務者で有意差はなかった。ただし該当職場では常日勤者と3交代勤務者では対象人数、年齢、職務内容が異なることから、結果の解釈には注意を有すると考えられる。 (2)交代勤務以外の要因で検査値に関連する要因について検討したところ、CD16+56+は喫煙者で低かった。 (3)交代勤務者は夜勤明けにCD3細胞率が増加した。またCD16+56+細胞率は減少した。夜勤による睡眠剥奪によって日内変動が修飾されたものと考えられた。 (4)また免疫能の夜勤前後の変動は女性が男性よりも大きく、喫煙者は非喫煙者より大きく、疲労度の影響も受けることが示唆された。 以上、交代勤務の自然免疫能に対する慢性的な影響は十分明かにならなかったが、夜勤後にNK細胞活性やCD16+56+細胞率が変化するなどの急性効果が認められた。このような変化の繰り返しによる長期的な健康影響について今後さらに検討を要すると考えられる。
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