研究概要 |
'97-'02年に収集された40歳未満で診断された若年胃癌症例と、性年齢(±3歳以内)を対応させた健診受診者に同意を得て血液を提供してもらい、55組の症例と対照のペアを作成した。血液からは血漿を分離し、pepsinogen (PG)、H.pylori抗体、inteleukine-8 (IL-8) Cu,Zn-superoxide dismutase (Cu,Zn-SOD)、inteleukine-6 (IL-6)、epidermal growth factor (EGF)、同receptor (EGF-R)、trans forming growth factor β-1 (TGFβ-1)、soluble Fas (sFas)、midkineを測定した。 先行研究と同様に、PG1高値、PG2高値、PG1/PG2低値が胃がんのリスクと正の関連を示した。また、PG2が敏感度83.3%、特異度81.5%と良好な値を示した。Cu,Zn-SOD、EGF、EGF-R、TGFβ-1、sFasでは、いずれも条件付きロジスティック回帰による分析で若年胃がんリスクと有意な負の関連を示したが、TGFβ-1とsFasではH.pylori抗体の陰性・陽性で調整するとこの関係は有意ではなくなった。EGFとEGF-Rは、胃がんの存在する状況では、産生が抑制されるか、消費される量が多いために、血清中の濃度が低下することが考えられる。Cu,Zn-SODについては、活性酸素の除去が低下している個体で、若年胃がんのリスクが上昇していることが考えられる。しかし、本研究のCu,Zn-SOD値は、これまでの研究よりも高く、採血から凍結までの過程で、血球内Cu,Zn-SODが漏出した可能性がある。TGFβ-1とsFasでは、若年胃がんリスクとの有意な負の関連が、H.pylori抗体の陰性・陽性による調整で消失していた。このことは、TGFβ-1とsFasの胃がんリスクとの関連が、H.pylori感染に関係するものであることを示唆している。 IL-6は若年胃がんリスクと正の関連を認めたが、H.pylori抗体の陰性・陽性で調整すると、この関係は消失した。H.pylori感染によって、IL-6が上昇し、若年胃がんのリスクが上昇することが考えられるが、今後検討が必要である。
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