研究概要 |
スクリーニングに用いるべく感度および特異性の高い結核抗原を探索し、すでにクローニングされている4つの候補抗原をピックアップした。これらの抗原はすでに報告されている既知の遺伝子でそれぞれ皮内反応、PCRによる検出など方法は様々であるが、今回行う予定の血清または尿を用いたスクリーニング等の手法では検討されていない。そのうち3つの候補抗原のcDNAを長崎大学の松尾先生より分与していただき、まずクローニングを行った。 最初にすでにクローン化されている結核菌(Mycobacterium bovis, BCG Tokyo)菌体抗原をコードする遺伝子mpb64をPCR法によりそのORF(open reading frame)を取得した。このPCR productをGateway ^<TM>クローニングシステムによりクローニングベクターpDONR201にクローニングし、さらに発現ベクターpET-DEST42にサブクローニングした。目的のMPB64タンパクを(His)6 tagとのfusion proteinとして発現した。更に、この発現したタンパクを(His)6 tagを用いてアフィニティー精製し、精製リコンビナントタンパクを抗原として、ウェスタンブロットにより活動型結核患者血清を用いて検討した。患者血清および尿は大阪府津田病院に入院中の活動性結核患者に十分なインフォームドコンセントのもと、同意を得た患者から血清を採取した。 その結果、リコンビナント抗原MPB64は活動性結核患者の血清と特異的に反応したが、健常者の血清ではその反応は検出できなかった。また、活動性結核患者5人と健常者5人の血清を用いてELISA法により、MPB64抗原に対する特異抗体価の測定を行った。その結果、患者血清の抗体価は健常者のそれと比較して高値を示した。また、患者の抗体価は治療の経過とともに減少する傾向が見られた。このことによりMPB64抗原は活動性結核患者のスクリーニングに使用可能であることを確認した。 現在、他の2つの候補抗原のDNAのクローニングを行っており、同様に抗原の有用性を、患者血清を用いたELISA法によりこれらの抗原の感度並びに特異性を比較検討する予定である。さらに患者の尿を用いて同様に検討を行っていく予定である。
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