昨年、MPB64抗原とその他のMPB70及びMPB83抗原を用いて患者血清との反応性を比較検討した結果、MPB64は活動性結核患者において特異的に反応しその抗原の有効性の可能性を報告した。本年度はこの抗原をDot-blot法を用いて更に検討を行った。目的のMPB64タンパクを(His)6 tagとのfusion proteinとして発現した。更に、この発現したタンパクを(His)6 tagを用いてアフィニティー精製し、精製リコンビナントタンパク抗原として取得した。このタンパクをニトロセルロース膜上に300μg/ml(1 spotあたり300ng)を最も高濃度の抗原液として4倍ずつ希釈した希釈系列を作製し、Dot-Blot ELISAを行った。ブロッキングした後に1000倍希釈した結核患者血清との反応性を検討した。その際、結果は検出可能であった最も低い濃度を限界希釈濃度として求めた。また、患者の入院時期、ガフキー号数、喀痰培養のコロニー数のデータと比較することにより、抗原との反応性の相関を検討した。 その結果、入院直後では低濃度の抗原で反応性が検出され、治療の開始から次第にその濃度は上昇し、ガフキー号数、喀痰培養のコロニー数のデータと相関を示した。 また昨年、結核菌のcDNA libraryを作製しスクリーニングにより得たクローン(BCG1)を用いて同様に患者血清との反応性を検討した。BCG1を用いてウエスタンブロットを行った結果、患者血清と特異的な反応を示したが、患者血清と健常者との反応性に相違が検出されなかった。 今回、活動性結核患者のスクリーニングに用いる抗原の探索とその有効性を患者血清を用いて検討を行った。結核流行の予防のためBCGが予防接種として使用されているため、健常者と結核患者との相違を検出することは非常に困難であった。今回の結果から、MPB64抗原が患者血清と特異的に反応し、その反応性も治療と同時に下降し、ガフキー号数等の臨床症状と相関を示した。これによりMPB64は活動性結核患者のスクリーニングに使用可能であるという知見を得ることができた。今後、さらに尿を検体とした検討も行い、尿で検出可能なスクリーニング法を開発する予定である。
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