本年度は、4年間の研究の総まとめを行った。本研究は、(1)妊産褥婦の睡眠・覚醒パターンの変化を出産の経過を追って検討すること、(2)乳児の睡眠・覚醒パターンの発達と発達過程に及ぼす社会的条件の要因を検討すること、(3)保育園児の決められた90分間の昼寝が夜間の睡眠に及ぼす影響を検討すること、(4)小学4年から中学3年生までの睡眠習慣の状態を検討すること、の4つの研究から構成されている。(1)(2)(3)の研究にあっては、乳児および幼児の母親(父親)から、また(4)の研究については本人からいずれもインフォームドコンセントを得て行われた。 (1)の研究では、産後における母親の夜間睡眠パターンは大きく乱れ、全睡眠時間は短縮し、睡眠効率は低下し、中途覚醒が増大し、サーカデイアン振幅が有意に減少していた。この睡眠悪化は出産後8週まで持続していた。 (2)の研究では、乳児の1日当たりの総睡眠時間は、週齢の進行と共に短縮していた。それは主として昼間期(8:00〜20:00)の睡眠時間の減少に依存していた。昼間期の睡眠時間は、出生後2週齢に比し9週齢以降の週齢でいずれも有意に短縮していた。早い乳児では出生後3週齢以降から暫時Circadian rhythmが形成され、10週齢以降には一層Circadian rhythmが顕著になった。第1子において生後5週齢までは2子以降の乳児よりも夜間期の睡眠時間が短縮し、生後8週齢から16週齢にかけての昼間期の睡眠時間は、第1子で大幅に増大していた。その相違は母親の養育態度と兄弟姉妹による睡眠妨害から考察した。 (3)の研究では、幼児における90分の昼寝の有無に関する介入研究から、習慣的な長い昼寝の悪影響を明らかにした。 (4)の研究では、小学4年から中学3年生1682名の調査から、学年進行とともに就寝時刻の遅延、睡眠時間の短縮、授業中の眠気が増大した。これらは、自宅でのパソコンゲームや課外授業と関連していることを明らかにした。
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