研究課題
基盤研究(C)
(1)特異項目機能(DIF)解析国際的に最も広く用いられている精神健康状態評価尺度、Center for Epidemiologic Studies Depression Scale (CES-D)に対し、本研究者が保有する日本人データおよび米国の白人等のデータをDIF解析を行なった。日本人のpositive項目群への回答には、国際的に特異的な、著しい抑制が見られることを実証した。(2)項目反応理論(IRT)解析多段階選択肢間の等間隔性の検討を目的として、職業性ストレス簡易版調査票(BSQ)およびCES-D抑うつ尺度の4回答選択肢データに対し、Generalized Partial Credit Modelを適用した。その結果、心理的ストレス反応項目(特にうつ症状)では、中間回答選択肢の潜在特性値上の距離は非常に狭いことが明らかになった。これは例えば抑うつ状態の測定に関して、個々の症状を多段階で評価するよりも、潜在特性上のある閾値を越えているか否かで評価した方が実際的であることを示唆する学術的に貴重な所見が得られた。(3)精神健康状態評価のためのCAT (Computerized-Adaptive Testing)システムの開発Modified Graded Response ModelによるIRT解析から得た、BSQ各項目の閾値(位置パラメータ)および識別カパラメータ推定値を基に、CATシステム初版を開発した。CATアルゴリズムは、制約付きベイズ法による項目選択法、CAT終了条件はθ値の推定誤差0.35未満を採用した。結果フィードバック画面も開発した。(4)CATシステム初版の現場試用メンタルヘルス用CATシステム初版を事業所で試用した。その結果、(1)平均10項目で推定は終了、(2)質問の画面提示から回答まで平均約7秒であった。(3)識別力の大きな質問項目が選択される傾向が顕著、(4)識別力の小さい『身体的愁訴』の質問は別モジュールとする必要がある、(5)現場での使用では中断機能が必要であることなどが明らかとなった。従来の調査票に比して多くの利点があるCATシステムは、本研究で初めて具体的な形となった。改善拡張により、次世代のメンタルヘルス増進活動の有用なツールとなることが明らかとなった。
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