研究概要 |
[背景]肝細胞増殖因子(Hepatocyte Growth Factor : HGF)は、各種臓器において臓器保護作用や再生作用さらには器官の発生にも関わっていることが明らかにされたユニークな増殖因子である。HGFは高血圧などの動脈硬化や心血管疾患との関連も報告されており、それらの患者の血清HGFは上昇している。一方、肥満者の増加した分泌脂肪細胞からHGFが分泌されている可能性があり、血清HGFの上昇と動脈硬化性疾患、肥満、インスリン抵抗性の間の関連性が推測されている。[目的]HGFが内皮特別増殖因子であることより、内皮機能障害という観点からHGFやその他の指漂(fibrinogen, vWF : von Willebrand factor)を含めて包括的に高血圧との関連を検討することを目的とした。さらに、HGFとインスリン抵抗性の関連性についても検証を行った。[方法・結果]1999年に行った福岡県田主丸町における住民検診受診者のうち、肝、腎、呼吸器疾患を除くデータが完全であった1466名(男性591名、女性875名:平均年齢:62.7歳)を対象とした。検査項目は、血清HGFの他、収縮期・拡張期血圧、BMI、血糖、インスリン、インスリン抵抗性の指標としてのHOMA指数、ヘモグロビンA_<1C>である。年齢・性別で補正した共分散分析の結果、HGFは血圧の重症度、vWF、fibrinogen, HOMA score、BAI、IRIと有意に正の関連を認めた。[結語]HOFは高血圧、閉塞性動脈硬化症、肥満、インスリン抵抗性と有意に関連していた。HGFは高血圧の診断的指標、重症度の判定に用いることが可能と考えられた。また、HGFは虚血の重症度との関連性が示された。肥満者におけるHGFの上昇は潜在性の動脈硬化性疾患に反応した血管保護、臓器保護作用である可能性も示唆された。
|