研究概要 |
昨年度考案した薬剤の有害事象をレセプト傷病名から検出するデータマイニング指標「因果関係度」を日本医療データセンター(JMDC)社データベースで標本数を拡大して適用した。JMDC社は8健康保険組合と契約し不可逆的匿名(暗号)化手法により外来レセプトと調剤レセプトを個人単位でリンクし,2004年9月〜2005年8月の1年間,152万401件,のべ178,942人患者について,薬剤の調剤日と傷病名の診療開始日との関係により以下の方法でデータマイニングを実施した。 1)薬剤と傷病名(ICD10)との総組合せ(直積,デカルト積)を算出(205,016組) 2)近接度(同時出現数/同時出現期待値)を算出し>1のもののみを抽出(137,359組) 3)薬剤調剤日が傷病名の診療開始日より先行しているもののみ抽出(17,380組) 3)で得られた17380組について二項検定を行い,p値の小さいものはその薬剤投与後にその傷病名が偶然とは考えられない程度の確度で出現した,すなわちその薬剤に起因する有害事象の確率大と判断できる。 その結果,塩酸テルビナフイン(商品名ラミシール。ノバルティス社のアリルアミン系抗真菌薬)を投与された18人中14人が投与後に中毒性肝障害(ICD10コード,K71)で診療開始され,二項検定のp値0.015と因果関係が濃厚であることが判明した。レセプト内容を精査したところ,内訳は男11女3,平均年齢45.2歳,処方日から肝障害診療開始日まで平均約20日と判明した。 医薬品集によると「市販後使用成績調査6929例中,肝障害等は106件(1.53%)」また医薬品機構の副作用報告では19例中6例の報告があった。データマイニング結果は肝障害副作用の発現頻度が従来の報告より相当高い可能性があることを示唆した。 最終年度においてレセプトより薬剤有害事象検出のためのデータマイニング手法はほぼ完成された。
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