研究概要 |
本年度は認知機能低下高齢者を効率的かつ効果的にスクリーニングする手法の開発を探索した。我々は心血管系疾患発症の予知因子として注目を集めている動脈脈波速度(PWV)の測定を住民健診に導入し、PVと認知機能低下との関連性を報告してきた。一方、住民健診においてPWVおよび足関節上腕血圧比(ABI)測定の変動をする際に、測定の信頼性を踏まえた妥当な測定間隔を設定する必要がある。よって1年間隔で3回、PWVとABIを測定することにより、その変動(幅)とそれに及ぼす年齢の影響を検討した。 方法は新潟県与板町において2002年6月に実施された基本健康診査を受診した40歳以上の住民1028人(同年代人口4295人の23.9%)のうち、測定を希望した632人に対しform PWV/ABI(日本コーリン社製)を用いてPWVとABIを測定した。その後、2003年及び2004年とも同様の測定を行い、3回とも測定された460人を解析対象とした。年齢階級別にPWV、ABIの3回測定したデータについて変動係数を算出し比較した。また、1年間隔の2つのデータの差の分布から、95%信頼区間をもとめ、その範囲内の変化は有意ではないとみなした。 その結果、PWVの変動係数はABIのそれに比べて大きく(平均±SD:6.3±3.8% vs.3.6±2.2%)、年齢と有意な正相関(Spearmanの順位相関係数(rs)=0.26,p<0.001)があったが、ABIの変動係数では有意ではなかった(rs=0.04,p=0.392)。PWVおよびABIにおける第1回測定と第二回測定間および第二回測定と第三回測定間での差(ΔPWV1、ΔPWV2、ΔABI1、ΔABI2)の95%信頼区間は-429.91〜282.98、-276.68〜423.85、-0.14〜0.14、-0.14〜0.15であった。特に75歳以上の者ではPWVの変動係数およびΔPWV1、ΔPWV2が大きかった。
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