研究概要 |
在宅自立高齢者において認知機能低下が初回介護保険認定に至る予知因子であることを実証した。新潟県Y町在住の65歳以上全高齢者1,673名を対象にした面接聞き取り調査(2000年11月実施、初回調査と称す、応答率92.3%)において厚労省「障害老人の日常生活自立度判定基準」でJ0、J1に相当し、既に要介護認定を受けていた4名を除く1,225名をその後3年4ヶ月間追跡した。この間、要介護認定者を軽度要介護認定群(要支援〜要介護1)、重度要介護認定群(要介護2〜5)、未申請で生存した群(以降、イベント未発生群と称す)に分類し、Cox比例ハザードモデル(ステップワイズ法、性、年齢、慢性疾患の既往を調整)により介護保険認定に至る予知因子を抽出した。軽度および重度要介護認定に共通する独立した予知因子は、年齢(高い、5歳上昇ごとのハザード比[95%信頼区間]はそれぞれ1.81[1.40-1.52]、2.14[1.65-2.79])、過去1年間の入院歴(あり、それぞれ2.67[1.25-5.70]、2.28[1.07-4.88])であった。軽度要介護認定のみのそれは、歩行能力(1km連続歩行・階段昇降ともに難儀あるいは不能、4.92[2.26-10.75])、いずれかが難儀あるいは不能、3.54[1.64-7.68])および咀嚼力(あまり噛めない以下、3.04[1.53-6.04])であった。重度要介護認定のみのそれは、認知機能(低い、MMSE1点低下ごと1.13[1.03-1.23])、手段的自立(低い、1点低下ごと3.01[1.49-6.06])であった。在宅自立高齢者においては、軽度要介護認定の独立した予知因子の特徴として歩行能力、咀嚼力といった身体機能が、重度要介護認定のそれとして認知機能や生活機能の低下が示された。
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