初老期認知症患者の家族介護者における介護負担に関連する要因を明らかにし、老年期認知症患者の家族介護者との差異をふまえた適切な支援策を検討することを目的として調査を行った。調査対象者は、専門医によって認知症と診断された患者とその同居家族介護者であった。患者の認知機能(MMSE)、精神症状(NPI)、認知症の重症度(CDR)、および介護者の介護負担(J-ZBI)は、主治医により評価された。家族介護者の健康状態や介護状況に関しては、自記式質問票にて尋ねた。 52組の対象者のうち、患者の初診時年齢が65歳未満であった8組を初老期群、65歳以上であった44組を老年期群とした。両群で患者の男女比に有意な偏りはなく、両群ともにアルツハイマー病が半数以上を占めていた。また、患者の認知機能(MMSE)、精神症状(NPI)、および認知症の重症度(CDR)について、両群間に有意差は認められなかった。初老期群と老年期群の介護者において、男女比に偏りはなく、多くが患者の配偶者であった。初老期群では、介護負担は、介護者の健康上の問題と強い正の相関(スペアマンの相関係数0.826)を示し、患者の初診時年齢と有意な負の相関(相関係数-0.778)を示した。一方、老年期群においては、患者の精神症状(NPI)、重症度(CDR)、および、介護者の介護時間、健康問題、ADL介助に対する困難さ、BPSDに対する困難さ、それぞれと介護負担との有意な正の相関が認められた。このように、老年期群では、患者や介護者の様々な状況が介護負担の関連要因であったのに対し、初老期群では、介護者の健康問題が介護負担に大きく関連することが明らかになった。 したがって、初老期群の介護者においては、介護者の健康状態に対する直接的な身体的・心理的ケアが、介護負担の軽減につながる可能性があると示唆された。
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