研究概要 |
日本人に高頻度に認められる中程度の高トリグリセリド(TG)血症(IV型高脂血症)は、動脈硬化性心疾患(CHD)の危険因子と考えられている。高TG血症は、リポ蛋白リパーゼ(LPL)遺伝子と肝性トリグリセリドリパーゼ(HTGL)遺伝子異常ヘテロ接合体の遺伝素因と環境因子(肝臓でのTG合成を亢進する因子:アルコール多飲や高インシュリン血症等)の負荷で発症する。それ故、LPL遺伝子異常ヘテロ接合体を早期診断することは、将来の動脈硬化症に対する予防医学に於いて重要な課題である。現在、我々によって検出・集積された日本人のLPL遺伝子変異は、15種類で、本年度(15年度)は、エキソン3のY61X,エキソン5のV200A,A221-del,エキソン6のR243C,A261T,エキソン7のA334T,エキソン8のW382Xの変異をモデル系として、電気化学的アレイ(Electrochemical array:ECA)チップによる検出プロトコールの開発を試みた。それぞれの変異を検出する為の変異プローブ(15mer)と対応する正常プローブ(15mer)を25ピン電極表面に固定化し、検出用電極として使用した。それぞれの変異を含むLPL遺伝子の各エキソンをPCR増幅し、各PCR産物をテンプレイートとし、アシンメトリックPCRを行い、プローブとハイブリ後、縫い込み型FNDインターカレーターを含む0.25xSSC緩衝液中で、Differential Pulse Voltammetry (DPV)を行ない、遺伝子型を決定した。正常/正常のホモ接合体は、正常プローブ電極で、最大電流値を示し、変異/変異のホモ接合体は、変異プローブ電極で、最大電流値を示し、正常/変異のヘテロ接合体は、正常および変異プローブの両電極で、電流応答が得られた。確立したECAシステムを用いて、50例の臨床検体に対してブラインドテストを行った結果、全7例の遺伝子型を確定することが可能であった(研究成果の一部は、Analytical Sciences,19:79-83,2003に発表)。
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