研究概要 |
脂質および糖代謝とがんの関係はいまだ解明されていない。長崎における原爆被爆者516人について75g糖負荷値と血清脂質値(1983年、1985年)とがん罹患の関係について調査を実施した。 ベースライン時のがんおよび5年以内の進行がん、死亡を除いた451人(男性214人、女性237人)について2000年までのがん罹患を調べ、糖、脂質代謝値とがんの関係についてCox比例ハザードモデルで解析した。 がん罹患に対する性・年齢調整相対危険度はそれぞれ、総コレステロール値(10mg/dl)について0.903(95%CI:0.842-0.968)、被爆線量(1Sv)について1.740(95%CI,1.238-2.446)、喫煙に対して1.653(95%CI,0.922-2.965)、また、75g糖負荷後1時間値について1.024(95%CI,0.996-1.053)の通りであった。 性、年齢、喫煙、肥満度、1時間後血糖、トリグリセリド、総コレステロール、HDLコレステロールおよび被爆線量を用いた重回帰分析では、総コレステロールで相対危険度0.876(95%CI:0.791-0.957)で負の関係、被爆線量では1.809(95%CI:1.252-2.613)と正の関係がみとめられた。 がんの進展において、それぞれ独立してコレステロールは負の関係、被爆線量は正の関係が示唆された。
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