先天性中枢性低換気症候群は別名Ondineの呪いとも呼ばれる疾患で、乳幼児期に発症する睡眠中の無呼吸発作を主症状とする。この疾患は、法医解剖ではよく出会う乳幼児突然死症候群(SIDS)に病態が類似し、鑑別が必要となっている。今回我々は、この先天性中枢性低換気症候群の原因遺伝子の一つとされるreceptor tyrosine kinase proto-oncogene(RET)の遺伝子内ハプロタイプ解析を通して、SIDSと診断された症例にこの遺伝子異常が含まれていないかを検討することを目的としている。現在までに、JSNPデータバンクから6ヶ所の頻度の高いSNPを遺伝子座全体から選び出し、PCR増幅の後RFLP法にて変異を検出する系を確立している。これを健康成人約180検体につき行い、各SNPの遺伝子型を決定した。得られた遺伝子型から、6つのSNPの一対間の連鎖不均衡値(D')を計算してみると、いずれも0.7以上と比較的高い値を得た。すなわち、この結果は、この遺伝子が40kbを超える大きなものであるにもかかわらず、組み換えを起こす頻度の少ない比較的安定な遺伝子であることを示している。また、これらの組み合わせから、このRET遺伝子は大きく3ないし4ヶ程度のハプロタイプに分けられることが解析され、各対立遺伝子の頻度も計算された。来年度は、このハプロタイプの頻度をSIDS症例に適応し正常群と差がないか検討を加えてゆくことと、症例にRET遺伝子異常がないか直接DNA配列を決定し解析してゆくことを予定している。
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