研究概要 |
原因不明の乳幼児突然死症候群(SIDS)において背景にあると推定されていることは、窒息事故のような物理的要因もあるが、呼吸器系・循環系・脳神経系の先天性異常もある。しかし、後者の遺伝子異常を解剖検査から判断することは難しく、DNAを解析することによりその異常となりうるゲノム上の変化を見つけ出すことを試みている。遺族より実験目的での使用について承諾を得た24例につき、血液よりDNAを抽出した。現在までに、呼吸中枢の機能障害から無呼吸発作を引き起こす先天性中枢性低換気症候群(CCHS、Ondineの呪い)の原因とされているRET proto-oncogene、Phox2 (paired mesoderm homeobox 2b)、ZFHX1B (zinc finger homeobox 1B)、CSTB (cystatin B)、EDNRB (endothelin receptor type B)の5遺伝子の解析を終了している。その結果、非同義置換をいくつか検出したが、それが直接的に発現や機能の異常に結びついているとは考えにくかった。すなわち、SIDSにはこのCCHSが含まれる可能性は低いのではないかと推定された。また、CSTB遺伝子の解析の際に、リピート病の原因ともなりうるプロモーター領域12塩基繰り返し多型の発生についてヒントを得たのでそれをまとめ論文としている。その他、ミトコンドリアゲノム全体の解析も行なったが、1例にMitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis, and stroke-like episodes (MELAS)の変異をtRNA領域に検出した。MELASは小児期に発症する慢性進行性疾患であるが、乳幼児の突然死に関連する可能性がある。現在、研究は完了し、まとめている。
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