本調査で、平成9年4月から11年9月までに筑波大学精神保健グループが行った刑事精神鑑定75例を通院状況に着目して「非接触」群「通院・相談」群に分類し比較検討し、さらに、後者の「通院・相談」群を「中断」群と「継続」群に分類し比較検討を行った。 その結果、「非接触」群と「通院・相談」群との比較では、重大犯に限った前科と精神分裂病がそれぞれ「通院・相談」群で高い傾向を認めた。また、人格障害は「非接触」群で高い傾向を認めた。「中断」群と「継続」群との比較ては、罪状別において、放火においては「継続」群で高い傾向を認めた。前科の有無は「中断」群で高い傾向を認めた。精神遅滞は、「中断」群で高い傾向を認めた。 結局、関係諸機関との接触状況に人口統計学的な差がない、重大犯罪をなした者は医療機関に繋がりやすい、精神分裂病者は関係諸機関と接触しやすいが人格障害者は接触しにくい、精神遅滞者は医療の適応とならないが逸脱行動を繰り返す、物質関連障害者が医療を中断しやすい、医療の中断が再犯と関わりがある、分裂病者の被害妄想が犯罪と関わりがあるという知見を得た。 次に、事例を呈示し詳細な検討を行い、事例の持つ問題点を、1.患者側の問題、2関係諸機関の問題、の2つに大別しその中でさらに問題点を小分類した。最も多かった問題は、1患者側の問題における「治療コンプライアンスの悪さ」であった。 その結果、現行制度の改善点として、前科・前歴のある障害者について危険性の伝達を徹底して行うこと、福祉機関との連携が重要であること、精神科救急の拡充、精神遅滞者を支援するための関係諸機関の連携の必要性、物質関連障害者に接する諸機関の連携と専門治療施設の必要性を述べた。また、3事例の検討から、現行制度の改善だけでは治療が困難であり、新たな制度として、非自発的な外来通院制度・粗暴な障害者を治療するための専門病棟の必要性を挙げた。
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