研究概要 |
"人種判定用DNA多型検査システムの研究"を遂行するために、本年度は、多型性に富むHLA型に関して研究した。問題点として、単一民族(例えば、近接する日本人と韓国人)を識別する特徴的なアリルを選出することは非常に困難であったが、民族学から民族に特徴的なハプロタイプ解析を行うことにより日本人の特徴が見いだすことが可能であった。日本人に特徴的で、韓国、北部中国にも見られるが、他のアジア集団ではみられないハプロタイプはA24-B52-DR15-DQ6(8.4%),A33-B44-D13-DQ6(4.0%),A24-B7-DR1-DQ5(4.1%),A24-B46-DR8-DQ6(2.2%>が挙げられた。また、B44を含むハプロタイプでは、日本人には全く見られていないA29-B44-DR7-DQ2が白人特異的なものであり、A29-B44-DR11は黒人特徴的なものであった。さらに、日本人には全く見られず、白人に見られるハプロタイプは、A3-B35-DR1,A3-B7-DR2,A1-B7-DR3が見られた。以上よりこのようなハプロタイプを推定できるHLA-DNA検査キットの構築を実施した。また、法医実務では、検査資料が微量であることから、通常の検査法では多型性に富み、民俗学的なデータも蓄積されているHLAシステムの検査が困難であることが解った。そのため、検体量が微量(10ng)でHLA-A-B,-DR-DQ座が検査可能なHLA-SPP (Sequence Specific Primer and Probe:ゲノムサイエンス社)法を用いて、パラフィン切片、毛髪、陳旧血痕、唾液から得たDNAを用いて検討したところ、今までの方法ではタイピングが困難であった微量試料からのHLA判定が可能となった。この方法はHLAの法医学領域での検査に有効であることが実証された。
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