研究概要 |
本年度の研究実績 1.Heme oxigenase-1(HO-1)の検討:Heat shock protein familyの一種であるHO-1の頭部外傷に基づく発現を明らかにするため,頭部外傷33例,対照例12例の大脳皮質を免疫染色して検討したところ,神経細胞では受傷後7時間〜7日生存例,アストロサイト(AC)では7時間〜5月以上までの生存例においてHO-1の発現を認め,頭部外傷の診断マーカーとして有用である可能性が示唆された。 2.脳内血腫における外傷性・内因性の鑑別診断:外傷性5例,内因性5例,不明1例の脳内血腫例について,大脳皮質,脳梁,中脳,橋,レンズ核,小脳等の切片に以下の各染色を施した標本を検討した。 (1)ビクトリア青染色による血管変化の検討:陳旧小出血を外傷性2例,内因性2例,不明1例に認めた一方,血管壊死の所見は内因性2例のみに認められ,血管壊死の検討が両者の鑑別に有用であることが示唆された。 (2)Amyloid precursor蛋白(APP),neuron-specific enolase (NSE)免疫染色の検討:外傷性軸索損傷の検出に有用とされ外傷性3例に陽性像が観察されたが,内因性1例の脳ヘルニア近傍にも同様の像が観察された。 (3)Angiotensin converting enzyme (ACE)免疫染色の検討:血管変性の検出に有用という報告があり,内因性2例に陽性像を認めたが,高齢者外傷例1例も陽性を示した。 (4)Excitatory amino acid transporter 2 (EAAT2),glial fibrillary acidic蛋白(GFAP)免疫染色の検討:EAAT2は受傷後数時間〜1日生存例でAC強陽性像を認めたものの,外傷性・内因性の間に差を認めず,同様にGFAPもACの経時的形態変化は認めたものの,外傷性・内因性の間に差を認めなかった。
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