研究概要 |
本年度の研究実績 1.Angiotensin converting enzyme (ACE)の基礎的検討:動脈硬化部のうち不安定プラーク内の血管平滑筋細胞等に検出されるACEを脳血管変化の検索に応用するための基礎的検討として,虚血性心疾患例の冠状動脈における染色性について検討した。早期心筋虚血マーカーである補体系膜攻撃複合体C9の染色性と併せて検討したところ,急性心筋梗塞7例は全例においてACE, C9の両者ともに陽性を示した。急性心臓死5例中2例,溺死5例中2例もACE, C9の両者が陽性であり,その他の死因9例はいずれもACE陰性であった。したがってACEは,完全に特異的とはいえないものの,不安定プラークの検出のために有用であり,脳動脈硬化の不安定性プラークの検索にも有用である可能性が示唆された。 2.脳内血腫における外傷性・内因性の鑑別診断に関する総合的検討:昨年度の研究実績と併せて検討したところ,外傷性・内因性に特異的なマーカーは見いだし得なかったものの,各染色法を組み合わせて検討することによって両者の鑑別が可能であることが示唆された。外傷性に比較的陽性像が多くみられるものとして,amyloid precursor蛋白,neuron-specific enolase, heme oxigeoase-1の各免疫染色,内因性に比較的特異的なものとして,ビクトリア青染色による血管壊死像の検出,ACE免疫染色陽性像が挙げられる。なお,両者の鑑別には有用ではないものの,発病(受傷)から死亡までの経過時間の推定に有用なものとして,excitatory amino acid transporter 2, glial fibrillary acidic蛋白の各免疫染色が挙げられる。今後,例数を増やし,さらに新しい血管構造物の免疫染色を加えることによって,さらに正確な鑑別が可能になるものと考える。
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