ミニサテライトB6.7について、我々はCaucasianのDNAを用いて、ローカスの詳しい性状とアリルの解析を進めてきていたが、今回、多数の日本人アリルをMVRマッピングして、多型性の調査やアリル間の類似性の検索を行った。その結果、調査した日本人(n=92)は全てヘテロ接合体であり、B6.7アリルの長さによるヘテロ接合度は100%であった。ただし、アリルの長さは、Caucasianのものに比べ有意に短い傾向にあり、最長のものでも240リピート程度にとどまり、70%以上のアリルが80リピート以下であるので、MVR-PCR法によりその全体の内部構造が明らかにされるため、日本人アリルはB6.7の研究において有用なものと考えられた。このうち、92アリルについてMVR-PCR法により、アリルをマッピングして内部構造を明らかにした。この結果、2種類のアリルのみが2回出現したが、他は全て異なっており、Ewensの式により推定すれば、この内部構造によるヘテロ接合度は99.95%と算出され、日本人においても、膨大な多型性を示すことが初めて示された。ところが、そのアリル構造はCaucasianのものに比べて極めて異なっており、ドットマトリクス解析をおこなったが、日本人やCaucasian内部で類似性によりグループ化されるものもあったが、両方に共通のモチーフを有するアリルは認められなかった。ミニサテライトB6.7の周囲の塩基配列には、遺伝子は認められず、Alu配列やLINE配列などの分散配列やミニサテライト、マイクロサテライトなどの縦列反復配列が多くを占めている。その中で、318塩基下流にあるSNPが発見されたが、このSNPをNlaIIIによるRFLPによって判定し、アリル構造との関連を検討したところ、アリルグループ内でSNPは同じ型を示すものが多かった。また、ミニサテライトB6.7の突然変異様式は、二重鎖切断の後のヘテロデュプレックス構造の修復過程において、パッチワークのように1リピート単位以下の細かい単位で修復の鋳型となるDNA鎖が入れ替わっていることを支持するものもみられ、ホットスポットの幅が意外に狭いことが注目された。
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