研究概要 |
昨年度に引き続き,マウス皮下出血モデルを用いてサイトカイン発現を指標とする皮下出血エイジングの可能性について検討を行った。皮下出血モデルは法医学的に問題となる皮下出血の受傷機転,すなわち鈍体の打撲・圧迫に即し,組織に対する侵襲を一定とすることが可能という観点からステンレスプレートを用いて皮膚を圧迫する方法を採用した。本年度は重要な細胞外器質の一つであり創傷治癒への関与が報告されているfibronectinのmRNAの発現動態をQuantitative PCP法を用いて検討し,あわせてこれまであまり報告されていない一定侵襲下での皮下出血に伴う炎症細胞浸潤動態の免疫組織学的検索を行った。その結果,好中球は受傷1時間後には見出すことができ,8時間後までは皮下および真皮下層にとどまるものの,以後全層性に浸潤し72時間後に強い浸潤を見た。マクロファージは受傷3時間後に検出され,24時間後までは皮下および真皮下層にとどまるものの,以後全層性に浸潤した。リンパ球は144〜240時間後に検出された。炎症細胞は受傷後,出血部位を中心とした皮下組織・真皮下層への浸潤のみならず,皮膚全層に広がる傾向を示し,受傷後経過時間との関連について再現性のあるデータが得られた。一方皮下出血後のfibronectin mRNA発現量は損傷作成後後期をピークとして経時的に変動していた。fibronectinの作用はオプソニン化への関与を含め多彩であるが,皮下出血治癒過程においては主として受傷後後期の組織リモデリングに関与しているものと推定された。
|