研究課題/領域番号 |
14570396
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
武市 早苗 東海大学, 医学部, 教授 (20035497)
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研究分担者 |
中嶋 克行 株式会社 日本抗体研究所, 開発部長(研究職)
後藤 信哉 東海大学, 医学部, 助教授 (50225653)
佐藤 文子 東海大学, 医学部, 教授 (70328128)
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キーワード | ポックリ病 / remnant lipoproteins / RLP-TG / 冠攣縮 / Rho / Rho-kinase / 心臓性突然死 / Hydroxyfasudil |
研究概要 |
ポックリ病はフィリピンではBangungut(バグゴ)、米国では夜間突然死症候群と呼ばれ、もともと健康な青壮年に発症する原因不明の突然死である。われわれは多数のポックリ病死の解剖例を検討し、冠動脈が狭小であること、高トリグリセライド(TG)血症が特徴的であることに気づいていたが、更に注意深い観察により心筋に超急性期の虚血性変化が観察されることを見出し、その原因として強烈な冠攣縮の可能性を考えてきた。ちなみにポックリ病死が夜間就寝中に発症することは夜間狭心症との関連が示唆されるところである。一方、ごく最近われわれが新しく開発した方法により、脂質の異常代謝産物であるレムナントリポ蛋白(RLP)の定量が可能となり、ポックリ病死の症例ではTGの中でもとりわけTG-richリポ蛋白であるRLPの異常高値が特徴的である事実を明らかにした。 今年度、われわれはRLPに強い冠動脈攣縮作用のあることを豚を使ったin vivo実験で明らかにした。すなわち、ブタ冠動脈外膜に、ポックリ死症例の血漿から分離・精製したRLPを染み込ませたコットンメッシュを巻きつけ、1週間後セロトニン刺激により冠動脈の攣縮を誘発したところ、RLP処置部分のみに特異的に極めて劇的な攣縮を起こすことに成功した。この攣縮は冠動脈の部位にかかわらず認められ、かつ再現性が確認され、更にRLP処置部位には低分子量G蛋白Rho/Rho-kinaseのmRNAの増量が観察された。この冠攣縮はRho/Rho-kinaseの阻害剤であるHydroxyfasudilで完全に阻害することができた。共同研究者下川らは、血管外膜のRho/Rho-kinase系が血管平滑筋収縮機構に深く関与していることを明らかにしてきたが、今回の結果はRLPがその活性化に深く関与することを示唆するものである。
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