研究概要 |
児童虐待の有無、程度の指標となる伝達物質の検索を目的として実験を行なった。本年度は、ストレス負荷した動物モデル(ラット)を用いて実験を行い、ストレスの内容としてはimmobilization, fasting stress(絶食ストレス)をラットに負荷した。 ストレス負荷後の影響を検討する臓器として、特に胸腺に限定せず、脳を含む他臓器の検索を行なった。また、注目する情報伝達経路として、細胞培養系の実験で、細胞に酸化ストレスや紫外線照射などのストレスを負荷した際に活性化される情報伝達経路が明らかとなっているStress-activated protein kinases(SAPK, JNK)について、特に注目して研究を行なった。 絶食負荷した実験モデル動物の肝臓において、JNKが活性化されることが明らかとなった。この活性化は一日程度の絶食では活性化されず、比較的慢性的な絶食ストレスが加わってはじめて活性化された。二重染色実験の結果から、JNKは肝臓のマクロファージにおいて特異的に活性化されることがわかった。JNKと同じファミリーに属するERKについても同様の実験を行なったが、ERKは肝臓の中心静脈近傍の肝細胞で活性化されていた。しかし、やはり同じファミリーに属するp38 kinaseについては慢性絶食ストレスによる活性化は観察されなかった。これらの結果は、慢性の絶食ストレスによってERKとJNKが肝臓内でそれぞれ異なった細胞内で活性化されることを示している。免疫組織染色の実験からは、これら慢性絶食ストレスによる肝臓内でのERKとJNKの活性化は腎臓、精巣および脳組織では観察されなかったことから、肝臓において特異的な現象である可能性が考えられる。 今後は、他の組織において検討を行なうとともに、絶食ストレス以外のimmobilizationによる各種臓器における上記情報伝達経路の検討を行なう予定である。
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