I型糖尿病は膵β細胞が自己免疫機序によって破壊され、インスリンが絶対的に欠乏して発症する。この過程の背景には専門的な抗原提示細胞である樹状細胞(DC)の異常が存在すると考えられる。本研究は、I型糖尿病患者由来の単球由来DCの分化の異常を、分化途上での遺伝子発現プロファイルの異常として捉え、将来的にI型糖尿病の予防的治療への応用することを前提として計画した。しかし、より遺伝的に均一な系での予備実験が必要と考え、I型糖尿病のモデルであるNOD(non-obese diabetic)マウスとそのsister strainであるNON(non-obese non-diabetic)マウスとを対象とし、マウス骨髄由来DC発現遺伝子のDNAマイクロアレイ解析によりこれらのstrain間で発現が大きく異なる興味深い遺伝子約70種類を同定した。特にNODでIL-6の発現が低下していたので、その意義を解析した。 4週令雌性マウス骨髄細胞をGM-CSFとIL-4との存在下で培養し、磁気ビーズを用いてCD11c^+DCを得た。 無刺激及び5mg/ml LPS存在下でのDCによるIL-6産生は、NODでそれぞれ574.4±59.28pg/ml、1298±114.4pg/ml、NONで10970±1685.0pg/ml、45845±3506.6pg/mlであり、NODで有意に低い値を呈した(p<0.05、Mann-Whitney test)。 DC分化誘導時にIL-6を添加すると、無添加の場合と比較してDCと自己CD4^+細胞との混合リンパ球反応は増強し、またDCのCD80、CD86発現強度が上昇した。DCのIL-6産生能にIL-6添加は影響を与えなかった。 骨髄由来DCの分化過程でautocrine的に産生されるIL-6レベルが低いことが、NODにおけるDCのフェノタイプ・機能の異常の原因の1つとなっている可能性があると考えられる。
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