研究課題
基盤研究(C)
心理的ストレスの負荷においても体内に酸化ストレスが発生することが明らかになりつつある。まず44歳の男性に、日々の心理面でストレスを感じた出来事(stressful life-event)に点数(1+ 〜 4+)を4ヶ月間に渡り付けてもらい(self-rating stress score)、同時に翌朝の尿中のバイオピリン値をクレアチニン補正して照合した(図 6a)。その結果、バイオピリンが高値を示した日が、self-rating stress scoreは3+(moderate stress)と4+(severe stress)であった。また、今までの報告で、心理的ストレスが活性酸素種(reactive oxygen species ; ROS)を発生することが分かっている。また、ビリルビンが抗酸化作用を持っていることも既に多くの報告がある。しかしながら、心理的ストレスにより生成したROSをビリルビンが消去しているか否かは、まだ分かっていない。そこで、スピーチ・ストレスを例に心理的ストレスと尿中バイオピリンとの関係について以下の検討を行った。第1群:会議に出席しなかった者(9名)、第2群:会議に出席し、スピーチを課せられなかった者(19名)、第3群:会議に出席し、20分間のスピーチの後、会社重役との質疑・応答を行ない成績評価を受けた者(32名)その結果、スピーチを課せられた群(第3群)のバイオピリン値は、会議に出席しなかった第1群(P<0.01)、会議に出席してもスピーチを課せられなかった第2群(p<0.05)よりも、有意に高値を示した。また、自己申告したストレス・スコア(self-rating stress score)と尿中バイオピリン値とは正の相関を示していた(r=0.53,p<0.01)(図7a、b)。興味深いことは、第1群と第2群の間にも有意差(p<0.05)があることで、第2群はスピーチこそ行わないが、会議の雰囲気に心理酌な影響(ストレス)を受けているものと考えられる(図 7b)。以上の事実は、尿中バイオピリン(ビリルビン酸化生成物)は、心理的ストレスの強度によって尿中に増加している。以上、本研究より、バイオピリンを利用した心理的ストレスマーカーとしての臨床応用への道が開けた。
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