研究概要 |
現在,ロイコトリエンやトロンボキサン受容体拮抗剤が気管支喘息の治療薬として有効性が認められていることから,これら双方を合成するアラキドン酸代謝系において最初の変換酵素であり,アラキドン酸の合成を調節する細胞質フォスフォリパーゼA2(cPLA_2)はさらに効率の良い気管支喘息の分子標的治療薬になると考えられる.我々はこれまでにcPLA_2がヒト好酸球β1,β2-インテグリン依存性の接着を調節すること,さらに、抗原感作ラットを用いた実験でcPLA_2阻害剤が好酸球の肺への浸潤と気道過敏性の亢進を抑制すること等を報告してきたが,今回のテーマは,気管支喘息患者からの末梢血や気管支肺胞洗浄液中の炎症性細胞,特に好酸球におけるcPLA_2、の発現量や活性化が亢進しているのかどうかについての評価である. 1.まず初めに好酸球のアラキドン酸産生能について検討では,健常者および気管支喘息患者それぞれ8名の末梢血好酸球を1μMのfMLpで刺激したところ,アラキドン酸の分泌能は気管支喘息群で有意に亢進していた.2.次に両群の末梢血好酸球2X10^6cellsの蛋白を抽出し,1μMのfMLP刺激によるcPLA_2活性化の違いを検討したところ,気管支喘息群で基礎値<fMLP刺激後ともに健常群に比べて活性化の亢進を認めた. これらの気管支喘息群末梢血好酸球のアラキドン酸産生能,cPLA_2活性化の亢進が,cPLA_2発現量の違いによるものか,または生体内において既にprimingされているための相違であるかを確かめるために,3.現在,好酸球中のcPLA_2の発現量の定量をsandwich ELISA法にて測定している.発現量は0.1ng/10^6cells単位と微量であるが,気管支喘息群で発現量の亢進している症例が含まれている.今後症例を増やし,また,real time PCR法で確認する予定である. 学会報告,また論文投稿は平成15年度の予定である.
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