研究概要 |
脂質メディエーターであるロイコトリエンやトロンボキサンは気管支喘息の増悪因子であり,これらの受容体拮抗剤は気管支喘息の治療薬として有効性が認められている。したがって,これら双方の合成を調節する細胞質フォスフォリパーゼA2(cPLA2)を阻害することは,さらに効率の良い気管支喘息の分子標的治療薬になると考えられる.我々はこれまでにcPLA_2がヒト好酸球のβ1-,β2-インテグリン依存性の接着を調節すること,さらに、抗原感作ラットを用いた実験でcPLA_2阻害剤が好酸球の肺への浸潤と気道過敏性の亢進を抑制すること等を報告してきたが,今回のテーマは,気管支喘息患者からの炎症性細胞,特に好酸球におけるcPLA_2の発現量や活性化が亢進しているのかどうかについて検討した. まず初めに好酸球のアラキドン酸産生能について検討では,健常者および気管支喘息患者それぞれ16名の末梢血好酸球を1μMのfMLPで刺激したところ,アラキドン酸の分泌能は気管支喘息群で有意に亢進していた,次に両群の末梢血好酸球2X10^6cellsを1μMのfMLP刺激して蛋白を抽出し,cPLA2活性化の違いを検討したところ,気管支喘息群は健常群に比べてfMLP刺激後に活性化の亢進を認めた(各n=12). これらの気管支喘息群末梢血好酸球のアラキドン酸産生能,cPLA2活性化の亢進が,cPLA2発現量の違いによるものか,または生体内において既にprimingされているための相違であるかを確かめるために,好酸球中のcPLA2の発現量の定量をsandwich ELISA法にて測定中した.発現量は健常群で0.36±0.13ng/10^6cells,気管支喘息群0.52±0.17ng/10^6cellsであり,気管支喘息群で発現量の亢進が有意に亢進していた.
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