【目的】腎炎・血管炎の発症および進展に種々のケモカインの関与が指摘されている。我々は遺伝子治療可能な分泌型ケモカインアンタゴニストの作成とMRL/1prマウスでの長期観察可能な系を確立し、ケモカインアンタゴニストの腎炎・血管炎・唾液腺炎の発症、進展への影響について検討した。また、SLE様マウス慢性GVHDモデルを用い、SLCアンタゴニストの慢性GVHD抑制効果について検討した。 【方法と結果】腎炎発症前の7週齢と腎炎を発症しはじめた12週齢のMRL/1prマウスにMCP-1アンタゴニストを導入した非転移性線維芽細胞株を皮下に移植し、それぞれ8週後に腎炎・血管炎の程度を検討した。MCP-1アンタゴニスト投与群はコントロール群に比較して、腎間質へのT細胞、マクロファージの浸潤の有意な減少、半月体形成の抑制、血管炎の抑制がみられ、MCP-1アンタゴニストは、腎炎、血管炎の発症および進展に抑制的に働いた。また、コントロールと比較して、唾液腺導管周囲の細胞浸潤の有意な減少、間質への細胞浸潤および線維化の抑制が認められた。さらに、フラクタルカインアンタゴニストを作成し、ループス腎炎の発症、進展への影響について検討した。コントロール群に比較して、糸球体内および間質へのマクロファージの浸潤の有意な減少があり、これにより半月体形成の抑制がみられ、フラクタルカインアンタゴニストも、腎炎の発症および進展に抑制的に働いた。SLE様マウス慢性GVHDモデルはDBA/2マウス脾細胞をBDF1マウスに移入して作成した。DBA/2マウス脾細胞をSLCアンタゴニストと反応させて移入した群では、コントロールと比較して脾腫の軽減や自己抗体産生の減少を認めた。 【結論】MCP-1アンタゴニストが腎炎・血管炎・唾液腺炎の発症および進展に抑制的に働き、治療に効果があることが期待される。フラクタルカインアンタゴニストも腎炎の発症および進展に抑制的に働いた。また、SLCアンタゴニストは慢性GVHDの予防に効果があることが期待される。
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