研究課題
基盤研究(C)
本研究計画を実施し我々は以下の点を明らかにした。(1)主に活性化T細胞上に発現するTNFRスーパーファミリー蛋白OX40は、このT細胞上から、OX40リガンド(OX40L)を発現する様々な抗原提示細胞上に特異的に移動することを確認した。このOX40分子の細胞間移動の結果、受け手細胞側のOX40Lの反応性は低下し免疫反応の制限が生じたことが示唆された。(2)活性化T細胞を始め様々なOX40発現細胞において、我々の樹立した抗OX40抗体で検出され得るOX40関連蛋白質(p35)が同時に発現していることを確認した。p35分子に付加された糖鎖解析を行い、通常のOX40(p50)と比較して翻訳後修飾の異なるp35の生化学的性状を明らかにした。そしてp35分子は上記のOX40分子の細胞間移動現象において、OX40p50と異なる移動パターンを示すことが明らかとなった。(3)OX40分子の細胞間移動は、細胞間接着を介するものと、細胞外に放出された後に生じるものの少なくとも2通りの経路があることが明らかとなった(投稿中)。加えて我々は自家腫瘍細胞パルス樹状細胞ワクチン療法を施行されている悪性腫瘍患者末梢血から樹立された腫瘍抗原特異的リンパ球と、患者樹状細胞の細胞間相互作用を検討した。これらの結果、患者単球由来の樹状細胞中には細胞寿命、サイトカイン産生、抗原提示能などが低下した特殊な細胞集団が存在することが明らかとなり、これらが悪性腫瘍患者に対して行われる免疫療法実施の際にも免疫能低下をもたらす原因の1つである可能性が示唆された。また腫瘍局所や癌性腹膜炎を有する腹腔内に存在するリンパ球と抗原提示細胞のOX40などの副刺激を介する相互作用により、リンパ球の活性化やサイトカイン産生パターンが影響をうけること示した。
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