膜型TNFは、サイトカインなどのさまざまな刺激に伴って活性化マクロファージやT細胞の表面に表出する可溶型TNFの前駆体である。膜型TNFの新しい免疫機能についてこの2年間は研究を進めてきた。我々は昨年までの研究で、T細胞株のJurkatで高発現した膜型TNFが、IL-2、IFN-γなどのサイトカイン産生、接着分子であるE-セレクチンの誘導、細胞内カルシウム濃度の上昇などの生物活性を示すことを明らかにしてきた。 また、近年抗TNF療法が、クローン病、関節リウマチ、強直性脊椎炎をはじめ、さまざまな炎症性疾患に効果があることが明らかになってきており、抗TNF抗体(infliximab)と可溶型2型TNF受容体(enbrel)とでは、効果を示す疾患にも違いがあることがわかってきた。すなわち、infliximabとenbrelは可溶型TNFは同様に中和することから、これら二つの抗TNF製剤は、単なる可溶型TNFの中和という作用以外に異なった作用機序を有することが予想される。我々は、樹立した膜型TNF発現Jurkat細胞を用いて、これら二つの抗TNF製剤の膜型TNFに対する作用を検討した。Infliximabとenbrelは、FACSで検討したところ、細胞表面の膜型TNFに同様に結合した。しかしながら、infliximabの方がよりavidityが強いと考えられた。また、以前に報告したE-セレクチンの発現について検討したところ、infliximabとenbrelは同様にE-セレクチンをJurkat細胞表面に誘導した。次に、infliximabとenbrelの内向きシグナルの違いを検討す目的で、ELISAによるサイトカインの産生の違いを検討した。Infliximabは、IL-10を誘導したが、IFN-γは誘導しなかった。一方、ebrelは、IL-10、IFN-γともに誘導しなかった。すなわち、抑制性のサイトカインであるIL-10の産生に関して、infliximabは亢進する方向に働いていることが初めて明らかになった。このように、膜型TNFは、炎症の局所において、炎症を制御する新しい細胞表面機能分子であると考えられる。
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