研究課題
関節リウマチ(RA)滑膜細胞の細胞周期に対するp53の影響を検討する目的で、RA滑膜細胞にプロテアゾーム阻害剤(MG132)を添加することで、内因性のp53発現誘導を試みた。細胞周期制御蛋白であるp53は、プロテアゾームでユビキチン化をうけ、分解されるため、細胞表面には通常は発現されない。プロテオゾーム阻害剤(MG132)で、p53の蛋白分解を阻害することで、用量依存性にRA滑膜細胞にp53の発現が誘導された。このp53の発現を誘導した滑膜細胞と、無処置の滑膜細胞を用い、その細胞周期と細胞周期蛋白を調べた。RA滑膜細胞を、増殖因子である血小板由来増殖因子(PDGF)で刺激し、DNA染色を行った。無処置のRA滑膜細胞は、PDGF刺激で、S期の細胞の増加が見られ、細胞周期の進行が確認されたが、p53を発現させた滑膜細胞は、PDGF刺激でもS期の細胞の増加が見られず、細胞周期が停止(cell cycle arrest)していた。またp53を発現させた滑膜細胞では、PDGF刺激で、Rb蛋白(網膜芽細胞腫蛋白)のリン酸化が認められないことが明らかになった。以上の結果より、プロテアゾーム阻害で、RA滑膜細胞に誘導される内因性p53は、増殖因子刺激による細胞周期の進行を阻害することより、細胞周期制御蛋白としての本来の機能を有していることが判った。従って、各種薬剤、遺伝子導入により野生型p53を発現させることで、RA滑膜細胞の増殖抑制、ひいてはRAの新しい治療法になりうることが示唆された。
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