研究概要 |
マウスES細胞からの樹状細胞分化誘導法の開発、これを用いた遺伝子改変法の開発、さらに、遺伝子改変樹状細胞によるマウス個体の免疫応答制御についての検討を行い、次のような成果を得た。 1.マウスES細胞をin vitroで樹状細胞へ分化させる培養法を開発した。マウスES細胞より分化誘導した樹状細胞(ES-DC)は、生理的な樹状細胞と同様の、抗原提示、T細胞刺激、in vivoにおける遊走などの機能を有することを確認した。さらに、樹状細胞の遺伝子改変法として、マウスのES細胞において遺伝子改変を行い、これをin vitroにおいて樹状細胞へ分化誘導するという方法を確立した。 2.卵白アルブミン(OVA)を腫瘍抗原のモデルとし、OVAとケモカイン(Mig, SLC,あるいはLptn)遺伝子を同時に発現するES-DCを作成した。このような遺伝子改変樹状細胞をマウス腹腔内投与し、OVAを発現する腫瘍細胞のin vivoにおける拒絶を誘導できるか否かを検討した。その結果、上記3種類のケモカインのうちでは、SLCを共発現したES-DCにより、OVA特異的T細胞を最も効率良く活性化でき、さらに、腫瘍拒絶能を最も強力に活性化できることが明らかとなった。 臓器特異的な自己免疫疾患を治療する方法として、自己免疫現象の標的となっている自己抗原に反応するT細胞の機能を特異的に抑制する手法を開発することを試みた。ミエリン鞘の構成蛋白であるMOG(ミエリンオリゴデンドロサィト糖タンパク)抗原などを用いてマウスを免疫することにより、EAE(実験的自己免疫性脳脊髄炎)が惹起される。この疾患は、ヒトの多発性硬化症の動物モデルとして広く研究に用いられている。本研究において、MOG抗原と同時にT細胞機能抑制分子をES-DCに発現させ、これをマウスに投与することにより、EAEの発症を抑制できることを見いだした。
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