研究概要 |
一昨年度から我々は、血中ウイルス量が測定感度以下の症例のproviral DNAを我々の開発した高感度法で測定を行い、CD4,8陽性細胞のターンオーバー(Ki67陽性細胞の測定)を調べ、症例の臨床経過や各種マーカーと照らし合わせながら、residual replicationを測る新たな指標となりうるかの検討を行ってきた。そして、血中のウイルス量が測定感度以下の症例でも、pDNAの変動を追うことでウイルスの抑制をより詳細にモニタリングすることができることがわかった。300以上のサンプルの測定の結果、従来慢性感染症例ではほとんど減少しないといわれてきたpDNA量が、より強力な治療への変更によって明らかに減少する症例があることもわかってきた。しかも、強化療法を行った症例ではpDNAの減少に伴いそれまで上昇しなかったCD4陽性細胞の数が増加し始めた。このことは、現在の治療で充分ウイルスを抑制できてない(pDNA量の多い)症例でも、治療の変更(強化)により、residual replicationを減らすことができ、ウイルスの増殖をより完全に押さえ込む可能性があることを意味している(現在投稿中)。また今回、長期間ウイルスが抑制されている症例の中に、一旦測定感度以下に低下したpDNAが再度検出されるが又すぐに感度以下に低下するといったような、いわゆるpDNAのBlipsが観察された。このことは、少なくとも血漿中のウイルスが一度もリバウンドしていない期間でも、ウイルスのreplicationが起こっていることが推測され、pDNA測定の重要性を示すものであると言える。これまでの検討の結果から、pDNAの高感度で安定した測定と同時にCD4,8陽性細胞のターンオーバーを測定することにより従来に比べて正確かつ鋭敏にHAARTのpotencyを評価できると考えられた。
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