研究概要 |
平成14年度は,(A)新たな筋炎特異自己抗体(MSA)の検索,(B)正常マウス系におけるMSA産生誘導を検討した.【方法】(A)(1)教室に自己抗体の検索依頼のあった937例(PM/DM 118;SLE 532;強皮症(SSc)207;PM-SSc重複症候群(OL) 80例)を対象とした.(2)自己抗体はアイソトープ標識HeLa細胞抽出物を用いた免疫沈降法で検索した.(B)(1)14種の正常マウス系(B6,B10,BALB/c, C3H, CBA系など)にプリステンあるいは生理食塩水0.5mlを腹腔内投与し,経時的に採血し,自己抗体を検討した.【結果】(A)(1)抗Jo-1(PM/DM22例;OL7例),抗EJ(PM/DM5例),抗PL-7(PM/DM4例;OL2例),抗PL-12(PM/DM1例),抗OJ(PM/DM1例)抗体などの抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体,抗SRP抗体(PM/DM11例),抗Mi-2抗体(PM/DM7例;OL1例)がPM/DMに特異的であった.(2)抗Ku(PM/DM4例;OL10例),抗U2RNP(OL12例),抗DNA-PKcs(PM/DM2例;OL2例)抗体はPM-SSc OLと密接に関連していた.(B)(1)抗OJ抗体を含む抗tRNA関連抗体がB6/B10(4/63),CBA/CaJ(1/12)に検出されたが,他の系では認めなかった.(2)抗SRP抗体は種々のマウス系{B6(2/30),BALB/cByJ(1/20),C3H/HeOuJ(2/8),DBA/1(1/15)}に広く認めた.また,抗7-2RNP抗体が抗SRP抗体を産生するマウス系{B6(6/30),C3H/HeOuJ(2/8),その他(4/122)}に共通して見出された。生理食塩水投与群では自己抗体は検出されなかった。【結語】(A)抗Mi-2抗体,抗DNA-PKcs抗体が本邦で初めて筋炎関連自己抗体として確認された.その詳細な臨床意義の検討が今後の課題である.(B)ある環境要因に曝露された正常マウスにおける筋炎特異自己抗体の産生が明らかとなった.本モデルはかかる自己抗体産生に対する遺伝,環境因子の役割を追究する上で有用と考えられた.
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