研究概要 |
平成15年度は,多数の膠原病患者血清を用い,抗シグナル認識粒子(Signal Recognition Particle : SRP)抗体の臨床免疫学特徴,筋病理組織学的特徴を追究した。 【方法】1)慶應義塾大学および共同研究施設を受診したPM/DMを初めとする各種膠原病患者血清3,450例血清を対象とした。2)自己抗体の検索:HeLa細胞抽出物を用いた免疫沈降法により,患者血清中の自己抗体が認識する核酸成分,蛋白成分を分析した。3)HLAクラスII遺伝子:患者,健常人末梢血白血球より抽出したgenomic DNAを用い,PCR-RFLP法により同定した。4)筋生検組織の検討:Hematoxylin/Eosin・Alkaline phosphatase・ATPase染色(pH4.5)などを用いた。5)抗SRP抗体と関連する臨床像,筋生検組織所見を検討した。【結果】1)抗SRP抗体の同定と免疫学的性状の分析:免疫沈降法による核酸成分のUreaポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)で,20例(PM:13例,DM:3例,重複症候群:2例,関節リウマチ(RA):2例)血清が抗SRP標準血清と同様の7SL RNAを免疫沈降した。これらの抗SRP抗体陽性血清のSRP構成サブユニット蛋白の認識様式はSDS-PAGEで,多様であった。2)抗SRP抗体陽性例はRA2例を除き,20例中18例が筋炎を持っていたが,DM皮疹は3例(15%)のみと少数であった。悪性腫瘍併発1例(5%),他の膠原病との重複もRA合併2例(10%)と少なかった。また,間質性肺炎4例(20%),多発関節炎4例(20%),レイノー現象1例(5%)と筋外症状は低頻度であった。治療ではステロイド反応性を認めるものの,重症筋炎,再燃性筋炎例を認め,9例(45%)が免疫抑制薬を併用されていた。3)筋組織所見を詳細に検討し得た同抗体陽性全10例(100%)に筋線維の壊死,再生を認めたが,炎症性細胞浸潤がなく,50%(4/8例)にtype1 fiber優位の所見を認めた。4)HLA DR8を41%(8/17例)に認め,高頻度であった。【結語】抗SRP抗体が特徴的組織所見を持つステロイド療法抵抗性筋炎と関連し,抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体陽性とは異なる筋炎の一病型を形成することが明らかとなった。また,同抗体産生に免疫遺伝学的背景が関与する可能性も示唆された。
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