研究概要 |
慢性関節リウマチ(RA)では慢性増殖性滑膜炎により骨・軟骨破壊が起こり高度の関節変形を来す。すでに滑膜組織培養によるin vitro骨破壊モデルを確立し,RA骨破壊に滑膜組織のマクロファージ様細胞(CD68^+, CD9^+)から増値・分化する破骨細胞様細胞が重要な役割を果たしていることを明らかにした。本培養系では前駆細胞である滑膜マクロファージが滑膜繊維芽細胞やTリンパ球とともに増殖し,単核前破骨細胞,多核破骨細胞に分化し,弾力な骨吸収活性を示す。破骨細胞の分化,活性化にはRANKL (receptor activator of NFκB ligand)とRANKL非依存系の2つのシグナルの関与が示されており,後者で明らかなのはTNFα,IL-1による破骨細胞の分化,活性化である。 今年度,滑膜組織培養における破骨細胞形成の分子メカニズムを明らかにするため,まずRANK/RANKL系,TNFの阻害をin vitro modelで検討した。OPG融合蛋白やsRANK-Fc融合蛋白は破骨細胞の形成やハイドロキシアパタイト上の骨吸収窩の形成を約40%抑制した。骨髄細胞や末梢血単球培養にM-CSF, RANKL加え破骨細胞を誘導する系ではOPGはほぼ100%抑制するのと比べると,異なったシグナルの存在が示唆された。また,TNFαの活性阻害の目的で,TNFαR-I or II-IgG-Fc融合蛋白の効果を検討すると,臨床で有効性が示されているTNFR-IIFc融合蛋白で破骨細胞や骨吸収窩形成が有意に抑制された。破骨細胞形成には,前駆細胞の増殖やコミットメント因子としてMCSFが必須である。最近,VEGFもMCSFと同様の作用が報告されている。滑膜細胞培養系では培養上清中にMCSF, VEGFが産生,分泌されていることを確認できた。また,培養中に存在するCD68^+,CD9^+陽性細胞はVEGFRを発現しており,VEGFR融合蛋白でVEGF作用を阻害すると破骨細胞形成が抑制された。以上より、RA滑膜組織を用いたin vitro骨破壊モデルではRANKL系にくわえTNFやVEGFも重要な役割を果たしていることが明らかとなった。 一方,予備的成績ではRANKペプチドはラット骨髄細胞とTNFαによる破骨細胞誘導系で抑制作用を示し,今後さらに滑膜培養系でも検討する予定である。
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