研究概要 |
これまで我々はperoxisome proliferator activated receptor gamma(PPARr)のリガンドであるtroglitazoneが胃癌細胞や膵癌細胞の増殖を抑制すること、及びそのメカニズムに細胞増殖の抑制因子であるp27Kip1の蛋白蓄積が必須であることを報告してきた(Takahashi et al.,FEBS Lett 1999,Motomura et al.,Cancer Res 2000)。今回更に、このp27Kip1蛋白発現亢進の分子機構を明らかにしょうとした。現在までp27Kip1蛋白はproteasome-ubiqutin systemによってdegradationされることが知られている。そこで、troglitazoneによるp27Kip1蛋白発現亢進に及ぼすproteasome機能の関与を検討した。胃癌細胞株(MKN-74)にtroglitazoneを添加すると用量依存性に細胞増殖を抑制し、p27Kip1蛋白の発現は亢進した。Proteasome inhibitorであるlactacystinは細胞増殖抑制とp27Kip1蛋白の亢進を誘導した。このことは、MKN-74細胞ではproteasome活性を抑制すると細胞増殖とp27Kip1蛋白の増加を誘導することを示唆した。次に、troglitazoneによりproteasome活性が変化するかいなかを測定した。Proteasome活性はtroglitazoneにより用量依存性に抑制された。以上の成績から、troglitazoneはproteasome活性を抑制した結果p27Kip1蛋白の分解が抑制され、p27Kip1蛋白の増加が引き起こされること、これがtroglitazoneによって生じる細胞増殖抑制の一因になっていることが示唆された。
|