胃粘膜損傷修復機構における分子シャペロンの機能

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14570442
• 研究機関: 秋田大学
• 研究代表者: 大高 道郎 秋田大学, 医学部, 講師 (30250872)
• 研究分担者: 渡辺 純夫 秋田大学, 医学部, 教授 (20138225) ; 伊藤 英晃 秋田大学, 医学部, 助教授 (80168369)
• キーワード: 分子シャペロン / 熱ショック蛋白質 / 粘膜修復 / 亜鉛 / 胃粘膜障害 / 消化性潰瘍

研究概要

平成14年度に行った研究概要は以下の通りである。
1)胃粘膜上皮細胞(RGM-1)を用いた実験系で、培養上清中に10-100μMの亜鉛を添加することによってHSP72の発現を細胞傷害なしに誘導できることを明らかにした。またラットを用いたin vivoの実験系でも30-100mgの亜鉛を投与することにより、副作用なく胃粘膜においてHSP72の発現を有意に増加させることができることを明らかにした(亜鉛の用量設定)。
2)上記1)のHSP72誘導法を用い、培養胃粘膜上皮細胞を用いた実験では、人工的に作成した細胞欠損部位の修復速度定量的に評価し、HSP72の誘導が損傷修復を促進することが明らかとなった。
3)ラットを用いたin vivoの実験でも、30-100mgの亜鉛による胃粘膜HSP72の誘導が、用量依存性に、塩酸の投与で作製した胃粘膜傷害の修復を促進することが明らかになった。
以上のことより、HSP72はその分子シャペロンとしての機能を介した細胞保護作用のみならず、上皮細胞の損傷修復においても極めて重要な役割を演じていることが明らかとなった。
現在、申請者らの研究成果の、より臨床的な意義を明らかにするため、何らかの外的環境の変化や薬剤の投与が、胃粘膜におけるHSP72の発現量を減少せしめ、粘膜損傷修復を遅延させる可能性のある要素に関しても検討中であるが、ある種の薬剤がHSP72の発現量を減少させることを既に発見している。

研究成果

• [文献書誌] Otaka M, Watanabe S.: "Role of mucosal mast cells in Helicobacter pylori infection.(Editorial)"J Gastroenterol.. 37. 70-72 (2002)
• [文献書誌] Itoh S, Otaka M et al.: "Inhibition of CN(protein phoshatase-2B)suppresses Ca2+-mediated acid secretion in rtas"Aliment Pharmacol Ther. 16. S26-S28 (2002)
• [文献書誌] Odashima M., Otaka M, et al.: "A possible role of zinc L-carnosine as a potent chaperon iuducer in cultured rat gastric mucosal cells and rat gastric mucosa"Dig Dis Sci. 47. 2799-2804 (2002)
• [文献書誌] Itoh H, Komatsuda A, Ohtani H, Wakui H, Imai H, Sawada K, Otaka M, et al.: "Mammalian HSP60 is quickly sorted into the mitochondria under dehydration"Eur J Biochem. 269. 5931-5938 (2002)
• [文献書誌] Matsumori M, Itoh H, Toyoshima I, Komatsuda A, Sawada K, Fukuda J, Tanaka T, Okubo A, Kinouchi H, Mizoi K, Hama T, Suzuki A, Hamada F, Otaka M et al.: "Characterization of the 105-kDa molecular chaperone : Identification, biochemical properties, and localization"Eur. J Biochem. 269. 5632-5641 (2002)