研究概要 |
劇症肝炎は重症の創生肝疾患であり、致死率も高い疾患であるが、劇症肝炎時の遺伝子発現の詳細については未だ明らかにされていない。そこで、まず基礎的検討として、ヒトおよびマウス肝臓から得られたcDNAライブラリーから作成されたIn house DNAマイクロアレイを用いて、マウス肝部分切除後の遺伝子発現プロファイルを経時的に検討した。肝再生の初期には蛋白合成や蛋白のプロセッシングに関連した遺伝子の発現がみられ、その後も持続しており、肝再生の初期からの蛋白供給の重要性を示唆するものと考えられた。また中期には血清分泌蛋白や代謝関連遺伝子の発現が次第に亢進し、その後抑制がみられることを示した。このことから肝再生における遺伝子発現の変化とその生理学的意義を明らかにしえたものと考えた。また、肝再生不全のモデルとして考えられるオーバル細胞誘導マウスモデル、すなわち肝切除後アセチルアミノフルオレン投与マウスやコリン欠乏食にて飼育したマウスモデルを用いて、これらの肝臓の遺伝子発現をDNAマイクロアレイを用いて検討し、通常の肝切除マウスの肝の遺伝子発現との差異を検討し、これらのマウスではinsulin-like growth factor binding protein-1,cyp 4a14,carnitine octanoyltransferase, osteopontinなどが高発現していることを明らかにし、これらの遺伝子が肝再生不全に関っている可能性を示した。 さらに、劇症肝炎患者および通常の急性肝炎患者の血清osteopontinレベルを検討したところ、劇症肝炎愚者では急性肝炎患者に比べて有意に高いこと、なかでも死亡例ではより高いことが明らかになった。また劇症肝炎患者から得られた肝組織の遺伝子発現状況を検討したところ、osteopontinの発現の亢進がみられた。このことから、劇症肝炎の発症にosteopontinが何らかの作用をしているものと考えられた。今後、肝再生におけるosteopontinの意義についてより詳細に検討する予定である。
|