研究概要 |
膵癌治療に用いられている抗癌剤であるGemcitabine使用の個別化・最適化をはかることを目的として、まず膵癌細胞株6種を用いてGemcitabineに対する感受性を検討し、各細胞株のGI50を明らかにした。さらに、用いた膵癌細胞株の遺伝子発現プロファイルを、1万種の遺伝子が搭載されたマイクロアレイを用いて検討し、そのデータベース化をおこなった。これらのデータを統合することで、GemcitabineのGI50と発現量が相関している発現遺伝子群を統計学的に抽出し、Gemcitabine感受性規定遺伝子群として明らかにした。いっぽうで、膵癌細胞株であるMIA-PaCa2細胞株に対してGemcitabineの約1年におよぶ長期曝露をおこない、残存してきたクローンをGemcitabine耐性クローンとして単離した(これらのクローンはGI50で親細胞に比べて約100倍のGemcitabine耐性能を有していた)。樹立したGemcitabine耐性クローンとそのparental細胞の発現遺伝子プロファイルを比較することによって、この系からもGemcitabine感受性規定遺伝子群を抽出した。複数の細胞株のGI50と相関する遺伝子から明らかにしたGemcitabine感受性遺伝子群と、耐性株の系から明らかにされたGemcitabine感受性遺伝子群とを比較し、重複した遺伝子(GPR3,FLJ10922,CRYAB,RPS13,FLJ25558,TNFSF6,PELO,STXBP3)をGemcitabineの感受性に最も関与している遺伝子として同定した。 これらの細胞株で得られた情報を臨床検体に演繹するために、超音波内視鏡による組織採取のみならず経皮的針生検、腹水中の癌細胞の収集などを、今年度も引き続きおこなって、今後の解析に備えている。
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