研究概要 |
肝炎ウイルス感染から肝癌への進展には著しい個人差があり,それにはウイルス側・宿主側の両因子が関与している.本研究では,肝炎ウイルス変異の解析と共に,宿主側因子,特に炎症・線維化に関わるサイトカイン遺伝子の調節領域に存在するSNPの解析により,肝病態進展、特に肝発癌リスクの個人差を解明し,実際の治療に貢献することを目的としている.本年度の実績として,1.インフォームドコンセントが得られたB型およびC型肝炎患者白血球DNAサンプルを約580名分収集し,臨床データなどを含むSNP解析用データベースを構築し,385名分を匿名化処理した.2.B型肝癌患者におけるB型肝炎ウイルス塩基配列の解析を開始した.特にHBx遺伝子の塩基配列につき優先して解析している.ゲノタイプ別のアミノ酸置換に加え,新たにグルーピング可能なアミノ酸置換を同定した.3.のべ約40症例のC型肝炎ウイルスコア遺伝子塩基配列を決定後,コア遺伝子を発現ベクターにクローニングし,インターロイキン8プロモーターの活性化能につき比較検討した.コア蛋白のC端側のアミノ酸置換により,NF-κBを介したインターロイキン8プロモーターの活性化能が変化し,しかも病態と関連することを明らかにした.4.280症例のC型肝炎患者につき,インターロイキン1β,インターロイキン1レセプターアンタゴニスト,TNFα,UGT1A7遺伝子多型につき解析し,インターロイキン1β遺伝子-31とUGT1A7遺伝子のコドン129/131が肝癌と密接に関連していることを見出した.5.185症例の輸血歴を有するC型肝炎患者につき,新たに300か所以上のSNP解析を開始した. 今後,B型肝炎においては主にウイルス側因子を,C型肝炎においては主に宿主側因子の解析を展開させていく予定である
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