研究概要 |
膵炎発症時に細胞内に出現する空胞は酵素顆粒とライソゾームの病的融合により形成され、その空胞形成の結果ライソゾーム内に存在するカテプシンが酵素顆粒内に存在するトリプシンなどの蛋白分解酵素を活性化することにより、膵の自己融解が生じ膵炎が発症、進展する。我々はこの空胞形成過程における膜小胞器官の病的融合に、生理的膜小胞器官融合に機能するSNARE蛋白が関与しているのではないかと仮説をたて研究を行ってきた。その過程で、消化器上皮細胞における空胞化毒素による空胞形成が、その機構解明の良いモデルシステムであることを見いだし、そのシステムを用いた検討を行った。その結果、病的空胞形成にはsnare蛋白の一つであるsyntaxin 7が促進的に機能していることを明らかにし、syntaxin 7の機能を抑制することで細胞内の病的空胞形成が抑制できることを見いだして報告した(J.Biol.Chem.2004,vol279,P8873).また更に、膵炎の急性期に続く膵線維化の発症機構の解明に研究を発展させ、膵線維化にはTGF-betaファミリーの一員であるアクチビンAが強く促進的に働いていること、更にはTGF-betaファミリーが膵線維化を促進させる細胞内機構も検討し、異なるSmad蛋白依存性刺激伝達系路を介してTGF-betaファミリーが多様な細胞機能修飾作用を発揮することにより膵繊維化を促進することを明らかにした。
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