研究概要 |
膵炎発症のメカニズムは未だ不明な点が多いが、膵腺房細胞内において酵素顆粒とライソゾームが異常融合することにより酵素顆粒内の蛋白分解酵素がライソゾーム酵素により細胞内で活性化、その活性化された蛋白分解酵素が腺房細胞傷害を惹起することが膵炎発症主たるメカニズムであると考えられている。しかし、その酵素顆粒とライソゾームの異常融合を来す分子機構は未だ明らかではない。そこで、我々は、この異常融合の分子メカニズムを明らかにする目的で本研究を行っている。酵素顆粒やライソゾームなどの細胞内膜小胞器官の生理的融合は細胞内小胞輸送機構により司られている。それより、急性膵炎発症時に認められる腺房細胞内での酵素顆粒とライソゾームの異常融合にも細胞内小胞輸送機構が関与していると考えられる。我々はこの異常融合の分子機構の解析を既報の(J.Clin.Invest.107:363-370,2001)VacA毒素空胞形成モデルシステムを用いて検討を行ったところ、snare蛋白の一つであるSyntaxin 7がライソゾームの異常融合による空胞形成に関与していることを明らかにし、発表した(J.Biol.Chem.278:25585-25590,2003)。更に我々は、膵炎後に生じる膵の繊維化機構をも検討し、膵星細胞からTGF-βファミリーの一員であるActivinAがオートクリンされ、その結果星細胞が活性化され膵の繊維化が促進されることも明らかにし、さらに、その繊維化の細胞内情報伝達機構も検討し、TGF-βファミリーによる星細胞の活性化と増殖制御は異なるSmad依存性の経路を介しいることを明らかにした(J.Biol.Chem.279:8873-8878,2003,Gut 52:1487-1493,2003)。
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