申請者らが、食道扁平上皮癌や子宮頚癌で認められる11q22増幅の標的遺伝子であることを同定した、IAPアポトーシスインヒビターファミリーに属するcIAP1の、臨床病理学的意義ならびに癌の悪性形質獲得に関わる分子機構についての検討を推進することを計画した。 1.cIAP1の癌における臨床病理学的意義に関する検討 前年度に、放射線単独治療後の子宮頚部扁平上皮癌症例の生存ならびに非再発生存の期間が、cIAP1の発現亢進のある群ではない群に比して有意に悪いことが前年度の検討で証明された。この結果をもとに、食道癌臨床例におけるcIAP1増幅例の検出をゲノムDNAマイクロアレイを用いて行うことを計画し、レーザーキャプチャーマィクロダイセクション法を行った70検体について検討を終了した。現在、増幅の有無と予後をはじめ臨床病理学的データとの関連を解析中である。 2.cIAP1の作用とその調節の分子機構癌に関する検討 cIAP1相互作用する分子の同定のために、bacterialおよびyeast two-hybrid systemを用いたスクリーニングを行った。結果、新たに相互作用する可能性のあるミトコンドリアに局在する分子が検出された。しかし、この分子の全コード領域を含むコンストラクトの強制発現系を用いた検討では、哺乳動物細胞内でのcIAP1との相互作用は確認されなかった。このため、タグ付きのcIAP1の弾制発現後免疫沈降法により共沈される蛋白をTOF-MSにより同定する解析法を導入することで、相互作用をする分子の同定を引き続き行っている。一方、siRNAを用いた一時的なノックダウンにより、cIAP1を高発現する細胞株の少なくとも一部においてにおける細胞死の誘導や薬剤抵抗性の解除が認められることを確認した。現在その機序についても検討中である。
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