平成16年度においては、腸内細菌叢に関する本研究でのこれまでの検討から、従来の培養法の改良では炎症性腸疾患の病態形成への胆汁酸代謝に関わる腸内細菌の解明が困難であることが明らかとなったことを踏まえ、潰瘍性大腸炎症例の腸内細菌叢のterminal Restriction enzyme Fragment Length Profile (tRFLP)解析を重点的に行った。すなわち、tRFLPのpreliminaryな検討から本症では健常人と明らかに異なるクラスター解析パターンを形成し、いわゆる難培養性・未同定のピークが腸内細菌叢の主体をなす可能性が示唆された。 そこで、これまでに43検体のtRFLP解析を3種類の制限酵素(HhaI、MspI、HadIII)を用いて行い、データベースからの菌種同定を試みた。その結果、本症のtRFLPのデンドログラムは大きく二つのクラスターに集約され、全大腸炎型、左側大腸炎型がクラスターI優位であるのに対し、直腸炎型は全例クラスターIIに属する特徴を認めた。また、難培養性菌群に加え、既知菌種データベースに合致しない本症固有の(健常人に比して)Hha1断片長61bp、222bp、576bp、592bp、602bp等のピークが同定された。現在、これらデータベース上の未知菌種の同定に向けての新たなデータベース作成と胆汁酸代謝との関連について検討を進めている。 一方、胆汁酸胞合酵素であるuridine-diphosphate-glucuronosyl-transferase (UGT)1A3、UGT2B7のCaco-2、HT-29細胞へのtransfectionについては、現在、Caco-2細胞のUGT1A3の高発現系を作成し、先に日本人で明らかにされた多型性を加味したhyodeoxycholic acidをはじめとする二次胆汁酸による細胞傷害、apoptosis誘導、IL8産生への作用の結果を取りまとめている。
|