ヒト肝細胞癌(肝癌)44症例及びそれらの非癌部組織を用いp53経路関連分子であるp14遺伝子の突然変異、欠失、プロモーターのメチル化異常を、それぞれPCR-SSCP、直接塩基配列決定法、multiplex-PCR、メチル化特異的PCRを用いて検討し、さらにその遺伝子発現をReal-Time PCRを用いて解析した。また、同一症例におけるp53異常を免疫組織染色法を用いて検討し、さらに肝癌の染色体不安定性を我々が改良した判定量マイクロサテライト解析を用いて検討した。その結果、2症例の肝癌組織にp14遺伝子エクソン2の突然変異が、また1症例の肝癌組織にp14遺伝子エクソン2の欠失が認められた。一方、p14遺伝子プロモーターのメチル化が認められた症例はなく、さらにReal-Time PCRを用いてp14遺伝子の発現を検討するとエクソン2の欠失が認められた肝癌では、発現は認められなかったが、その他の症例では非癌部に比べ、癌部では発現が亢進していたことより、肝癌においてp14遺伝子の転写調節機構には異常はないと考えられた。p14遺伝子の癌部での発現亢進は腫瘍の分化度と相関し、腫瘍の増殖能を反映する可能性が示唆された。一方、12症例の肝癌症例ではp53蛋白の免疫組織染色で異常が認められた。p53異常が認められた12症例中、高分化肝癌は1症例であったが、p14遺伝子異常が認められた3症例は全例高分化肝癌であった。以上の結果より、一部の肝癌ではp14遺伝子の異常が肝発癌に関与すると考えられ、またp53異常が高分化肝癌に少ない(p=0.042)のに対し、p14遺伝子は高分化肝癌にも認められ(p=0.032)発癌のより早期よりp53経路の破綻が肝発癌に関与すると考えられた。異常染色体をもつ肝癌組織はp53経路異常の認められる肝癌と比較してより早期の肝癌にも認められ、p53経路異常は異常染色体をもつ肝癌細胞に染色体不安定性を加速させる要因になりうると考えられた。
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