研究概要 |
再生医療としての肝前駆細胞/肝細胞移植療法を確立するためには、in vitroにおける肝細胞系細胞への分化誘導法を確立することが重要と考えられる。本年度、私どもは、これら肝幹細胞/肝前駆細胞の分化におよぼす肝増殖因子の影響を胎生期肝芽細胞と骨髄細胞を用いて検討した。(方法)1.胎生期肝芽細胞について:胎生期13.5、14.5日目のマウス肝臓より肝芽細胞を分離した。各種増殖因子(HGF, HB-EGF, EGF, TGF-a, bFGF)を添加し6日間コラーゲンゲルにて3次元培養し、肝細胞分化マーカー遺伝子の発現(Alb, HNF-4, a1-AT, AFP)を検討した。2.骨髄細胞について:成熟マウス大腿骨より骨髄細胞を採取し、各種増殖因子(HGF, HB-EGF, EGF, bFGF, 0SM, BMP4)を添加し、6日間コラーゲンゲルにて3次元培養した。RNAを抽出し、肝細胞の分化マーカーの遺伝子発現を検討した。また、Alb、CK18蛋白発現細胞の出現を免疫染色にて検討した。3.骨髄細胞を、hepatic stellate cell(HSC)と共培養しAlb遺伝子の発現誘導をみた。(成績)1.胎生中期の肝芽細胞において、HGF, HB-EGF, EGF, bFGFによりAlb, HNF-4,A1-ATなどの肝分化マーカーの発現誘導が認められた。その発現は、bFGFに比し、HGFやHB-EGFでより強く誘導された。2.骨髄細胞において、HGF, HB-EGF, EGF, bFGF, BMP-4, OSM(各2Ong/ml)添加、3次元培養にてAlb遺伝子発現誘導が認められ、特にHGF, bFGFの添加で強い発現誘導を認めた。免疫染色でもAlb, CK18蛋白発現細胞が確認できた。3.骨髄細胞は、HSCと共培養することでAlb遺伝子発現誘導を認めた。(考察)胎生中期肝芽細胞では、胎生初期の分化への関与が知られているbFGFに比し、HGFやHB-EGFのより強い肝細胞系分化への関与が考えられた。骨髄細胞の肝細胞系細胞への分化には、bFGFやHGFの関与が考えられた。また、骨髄からの幹細胞が、肝臓内で肝細胞へ分化する際にHSCが関与している可能性が考えられた。(結語)胎生期肝芽細胞や骨髄細胞の肝細胞系細胞への分化に増殖因子が関与していることが示唆された。
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