1)肝障害を合併発症した本邦EPP3症例の末梢血から抽出したgenomicDNA、あるいは培養化したリンパ球芽球から抽出したmRNAを用いてFECH遺伝子を(RT-)PCR法により増幅し、ABI PRISM3100 Genetic Analizerによるシークエンス解析にて変異部位の解析を行なった.その結果3症例とも欠失変異でかつヘテロ異常であった。症例ではFECH遺伝子エクソン3の303番目に1塩基の欠失変異が認められ(303delT)、症例2ではエクソン5に16塩基の1欠失が認められた(578-593del16bp).また症例3ではエクソン11に3塩基の欠失変異が認められた(1248delCTT). 2)変異が酵素活性にどのような影響をもたらすかを検討するため、あらかじめプラスミドベクター(pGEX-4T)にヒト正常FECHcDNAをクローニングしておき、上記で同定しえた.FECH遺伝子変異それぞれについて、部位特異的突然変異誘発(site-directed mutagenesis)法により大腸菌に異常FECH蛋白を発現させ、その酵素活性をHPLC法で測定した.発現実験で3つの異常。FECHはいずれも酵素活性の低下を示し、したがって各々の変異によるフレームシフトが各酵素の立体構造に影響を及ぼした結果、FECH活性が障害されたものと推定された. 3)制限酵素などを利用した家族内健康保因者発掘のための簡便なアッセイ系を確立し、同意が得られた2家系について同胞の解析を行った.生化学的に診断不能であった家系内保因者を同定しえた.ただ、遺伝診断の有用性は十分に示されたものの、同一変異を持つ同胞でも肝障害のみられない例があり、変異によるFECH活性低下のみでは肝障害発症を説明することはできなかった.
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