1)あらたに肝障害を合併発症した本邦EPP2症例の末梢血から抽出したgenomic DNAを用いてFECH遺伝子をPCR法により増幅し、オートシークエンサーにて変異部位の解析を行なった.その結果、今回の症例1(W県在住)では欠失変異でかつヘテロ異常が認められた.この症例ではFECH遺伝子エクソン7の751番目から755番目に5塩基の欠失変異が認められた(751-755delGAGA).症例2(F県在住)ではエクソン9にpolymorphismが認められたもののアミノ酸レベルでの置換はなく、異常蛋白を引き起こす変異としては認められなかった.この症例ではさらに鋭敏なスクリーニング法とされるGDDE analysisを試みたが遺伝子異常はみられなかった. 2)変異が酵素活性にどのような影響をもたらすかを検討するため、同定しえたFECH遺伝子変異(751-755delGAGA)について、部位特異的突然変異誘発法により大腸菌に異常FECH蛋白を発現させ、その酵素活性をHPLC法で測定したところ酵素活性の低下を示した.したがって、欠失変異によるフレームシフトによりFECH活性が障害されたものと推定された. 3)SSCPによる家族内健康保因者発掘のための簡便なアッセイ系を確立し、同意が得られたW県症例の家系について同胞の解析を行った結果、家系内健康保因者(父、妹)を同定しえた. 4)W県症例につき、FECH IVS 1領域と5'上流プロモーター領域を中心に、SNPsの有無をシークエンス解析にて、およびCpGアイランドのメチル化の有無をbisulfite-PCR法にて解析したところ、解析対象者すべてにおいて5'上流プロモーター領域の転写因子結合部位に異常を認めなかったが、発症者においてはCpGアイランドの一部にメチル化が認められた.このことにより、メチル化による転写活性の低下が示唆された.
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