1)肝障害を合併発症した本邦EPP5症例(5家系)から抽出したgenomic DNAあるいはmRNAを用いてFECH遺伝子を(RT-)PCR法により増幅し、シークエンス解析にて変異部位の解析を行なった.その結果、4種の異なる欠失変異でかつヘテロ異常が確認された. 2)各変異の酵素活性への影響を検討するため、上記のFECH遺伝子変異それぞれについて、部位特異的突然変異誘発法により大腸菌で異常FECH蛋白を発現させその酵素活性を測定した.それぞれの異常FECHはいずれも酵素活性の低下を示した. 3)家族内健康保因者発掘のためにDNAを利用した簡便なアッセイ系を確立し、同意の得られた家系について解析を行ったところ、生化学的には診断困難であった家系内保因者を同定しえた. 4)発症のメカニズムを解明するため、一部の症例につきFECH IVS1領域と5'上流プロモーター領域を中心として、SNPsの有無をシークエンス解析にて、およびCpGアイランドのメチル化の有無をbisulfite-PCR法にて解析したところ、解析対象者すべてにおいて5'上流プロモーター領域の転写因子結合部位に異常を認めなかったが、発症者においてはCpGアイランドの一部にメチル化が認められた.このことにより、EPPの発症にはメチル化による転写活性の低下が示唆される. ポルフィリン症はmultifactorial diseaseと考えられており、引き続き、遺伝子学的背景のみならず環境因子との関わりなど、多角的観点からの検討が望まれる.
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